二流研究者は国に弄ばれて死ぬ

in #japanese29 days ago

※こちらはリライト記事になります。

初note記事ということで、色々考えた結果

「二流研究者は国にもてあそばれて死ぬ」

というタイトルで記事を書くことにした。

まずは筆者の経歴をざっくりと紹介する。

・北海道札幌市生まれ・高校は札幌南高等学校に進学・1年の浪人後、北海道大学に進学・大学を卒業後、北海道大学大学院修士課程に進学・修士課程を卒業後、同大学院博士課程に進学・博士課程の2年目に大学院を休学その後退学

今日話したいのは、大学院の中の学振と呼ばれる制度についてである。

1.学振とは

学振とは日本学術振興会の略称で、将来の学術研究を担う優れた若手研究者を養成・確保するため、大学院博士課程在学者及び大学院博士課程修了者等で、優れた研究能力を有し、大学その他の研究機関で研究に専念することを希望するものを「特別研究員」に採用し、研究奨励金を支給する制度である。

長くなったので要約すると「若手研究者のための支援制度」これが学振だ。

制度の概要は日本学術振興会のホームページでも見てほしい。長々と概要が載ってある。

日本学術振興会-制度の概要

1-1選考方法

学振の特別研究員の選考方法は以下である。

1.学術の将来を担う優れた研究者となることが十分期待できること。2.自身の研究課題設定に至る背景が示されており、かつその着想が優れていること。また、研究の方法にオリジナリティがあり、自身の研究課題の今後の展望が示されていること。3.研究を遂行する能力が優れていること。(以下長いので省略)

要するに

「あなた、立派な研究者でやんす?」YES→採用NO→不採用

を審査会の専門委員に見極められるのだ。

1-2審査書類について

審査は書面で行われる。書面審査による評価は

➀「研究者としての資質」➁「着想およびオリジナリティ」③「研究遂行能力」

について絶対評価により5段階の評点が付される。そして、最終的に各項目の点数を踏まえて、総合的に研究者としての資質及び能力を判断した上で、書面審査セット内での相対評価により5段階の評点が付される。

私は頭が悪いので「書面審査セット内での相対評価」という意味がわからなかったが、書類の作成に尽力した。書類は概ね4月上旬に申請受付が開始され、5月の中旬が締め切りである。今年2020年はコロナウイルスの影響を鑑みて、締め切りが6月上旬まで伸びたらしい。申請者はラッキーです、ね。

学振が用意する所定の書類ファイルをダウンロードし、そこに必要事項を記入するのだが、ここで守ってほしいポイントは2点ある。

➀枠内を隙間なく埋めること。 まあ当然と言えば当然だが、スカスカな書類では審査は通らない。8割でもだめ。体感としては、9割5分は埋める必要がある。筆者は審査一発合格してないけどね。 図表を入れると隙間ができがちではあるが、体裁を整えてなんとか隙間の無いように埋める。埋めて埋めて埋めまくる。

➁理路整然とした文章でわかりやすくまとめる。 これはもの凄く重要である。研究の背景から始まり、既存の研究との対比、研究で工夫した点、研究が達成されることで期待される効果等、各項目に沿って書いていく。ここではわかりやすい、伝わりやすい文章で書かなければならない。「研究に関することなんて難しいんだから専門用語もバリバリ使わないと…」なんて考えてたらダメ。専門委員は専門委員でありながら「各研究に関する知識は素人も同然」なので、読んで理解できる文章にしないとまず読んでもらえない。

これを満たせたら、書類は完成。担当教員や周りの人に読んでもらって、書いてあることが理解できるかどうか確認してもらうと尚良い。自身の研究について書くと、独りよがりな文章になりがちなので、必ずわかりづらい部分があるはずで、そこを指摘してもらえる。後は提出して審査結果を待つのみである。

2.書類提出後

書類を提出したらもうやることはないので、自身の研究について日々邁進するのみである。筆者は理系の研究者であったが、毎日実験、実験、実験、実験…実験である。もちろん文献調査(自身の研究に関連する研究でこれまでにどのような研究が行われているかリサーチすること)は行うが、正直なところ結果が全てである。結果が出たら勝ちだし、結果が出たら論文が書ける。逆は悲惨である。いくら知識があっても結果が出ていないと「だからどうしたの、ボクゥ?」となる。

2-1長い審査期間

しかしいくら自身の研究をしていても、結果はすぐには来ない。それも当然で、選考は約4か月にわたって行われるのだ。長い、長すぎる。

選考結果は10月上旬に電子申請システム内で発表される。

2-2筆者の選考結果

選考結果は3つに分かれている。➀採用内定者…君は合格デース。お金受け取ってネー。➁不採用者…君は不合格デス。また来年応募してネー。③面接候補者…ちょっと君来て…

筆者の結果は③面接候補者であった。こちら

ちなみに申請者の内訳は採用内定者は約20%、不採用者は約75%、面接候補者は約5%である。ある意味で面接候補者は狭き門であった…。

2-3審査の落とし穴

面接候補者には続きがある。

採用内定者は辞退しない限り採用決定! 不採用者は第一次選考で終了だが、面接候補者は第二次選考が行われ、その中でまた採用内定者、補欠者、面接不採用者に分けられるのだ。

これがこの審査の落とし穴。面接候補者だけ別途面接を行い、その中から優れたものを採用内定者に引き上げるのだ。一見すると良さそうな仕組みだが、本当にそうだろうか? 発表はパワーポイントでの発表が4分、質疑応答が6分の計10分で行われるが、その面接選考は「4か月もかけて行った第一次選考よりも優れた選考」と言えるのだろうか?筆者は二流研究者をもてあそぶシステムとすら思えてしまうのであった。しかも面接場所は東京にある学術振興会の本部で行われるのだ。経歴のところで述べたように筆者は北海道に住んでいたので、わざわざ10分の面接のために15,000円程度の旅費をかけていかなければならなかった。

しかし冷静になると15,000円の旅費をかけて、もし採用されれば月20万の研究奨励金と毎年度150万円以内の研究費が得られる。つまり1年で考えると約390万円のお金の使い道が得られるわけだ。また面接候補者が合格する確率は約30%である。30%の確率で15,000円が390万円になるということは勝率30%の馬のオッズが260倍(390万÷15,000)であることと同義である!圧倒的期待値!これは賭けるしかない!!!

そのとき筆者はドイツへの留学最中であったが、発表資料を改めて練り直し、12月にはるばる日本に戻ってきて、面接を受けたのであった。(よく考えてみると往復旅券の費用をオッズに含めていなかった…。)

しかし現実は甘くない。勝率30%の単勝万馬券の馬は来なかった。

3.二流研究者の末路

結果は採用ではなく、補欠であった。そしてついに追加採用の連絡は来ずに学振の特別研究員として筆者が選ばれることはなかった。二流研究者のレッテルを貼られた筆者は面接後とんぼ返りしてドイツでの留学を続けたが上手くいかず、何の成果も得られずに日本に帰ってきた。 結果から振り返ることしかできないが、面接に様々な形態が採られていたら、最低でも余計な旅費等はかからなかったのではないか。今やコロナウイルスの影響でオンライン会議や面接が普通に行われている。日本の将来を担う優秀な若手研究者を採用したいと考えているのなら、日本学術振興会はそれ相応の柔軟な面接形式をとるべきではないかと思う。

4.研究者を目指す皆様へのアドバイス

こうして現在、筆者は研究への情熱が消えてしまい、休学をしている。研究者を目指す皆様にはこうなってほしくないので、このような失敗談をnoteに書いた。このnoteで言いたかったことは

「日本学術振興会の選考フローを見直したら、もう少しまともな採用形式になり、学振に応募する若手研究者の一部が振り回されることもなくなるのではないか」

ということである。しかしながら、結局のところ優れた研究はそれ相応に評価される。稚拙な文章のせいで、その優れた研究の評価が薄れることもあるのは事実だが、まず自身の研究に自信をもって、日々の研究に没頭してもらいたい。そして学振の特別研究員に応募するときには「そういえばこんな二流研究者もいたな。」と思い出し、自身の人生の最悪のシナリオも想定した上で、筆者と同じ道を辿らないように注意してもらいたい。

これにてこのnote記事は終わりである。「こいつ哀れだな」と思ったら少しでもサポートしてくれたら筆者は泣いて喜びます。

また、このnoteは40分程度で書いたので、誤字脱字もあるだろうし文章構成もグダグダなので、筆者がもしも専門委員だったら、このような文章は速攻で不採用にしますね。 学振の書類を出す予定のある人は1項目に1日の時間をかけて書き、10日ほどで文章の草案を完成させ、後の10日で文章を推敲する、20日スタイルを取りましょう。そうすれば間違いなく20%弱の採用内定者になれるはずです。

どうぞみなさま、人生設計を大切に。

P.S. 日本学術振興会様へ 第一次選考で不採用にしてくれよな。

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