日本に’おける仮想通貨課税

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仮想通貨に関する税務の必要性–その理解と対策の必要性

1.1 2018年－波乱の確定申告元年

サト　 2018年は、はからずも「億り人」[1] になってしまった人たちの確定申告元年だったけど、波乱の申告だったね。

トシ　 2017年末から2018年1月にかけ、ビットコインをはじめとする仮想通貨は最高値を更新したよね。そのころに、翌年3月（日本）や4月（米国）の確定申告に照準を定め、現金化を図った人たちは良かったんだろうけね。僕は、1月中に現金化を図ったから、まだ納税できたんだけど、どちらもやらなかった人たちは大変な結果となっているんじゃないかと思うよ。もっとも、僕も12月ではなく、1月に現金化したので、来年の納税対象額があがっているんだけど。 [2]

サト 仮想通貨は持っているが現金はない、価格が下落したため、全仮想通貨を売却しても納税額に満たないなどの状況になったら、下手をすると破産だね。

トシ　「税務の知識がなかったために納税できなくて破産した」、「破産はしなかったけど、持ち出しを行って納税した」などということも生じているのみたいよ。そうそう、ケイくんが言ってたんだけど、それゆえ、確定申告しなかった人のところに、最近、査察が入っているみたいだよ。 “In this world nothing can be said to be certain, except death and taxes.”（「この世で確かなものは死と税だけだ」）、ベンジャミン・フランクリンの言葉じゃないけど、まさに「death and taxes」だね

サト　でも、ひどいよね。日本では仮想通貨の取引による所得は雑所得とされているでしょ。課税所得金額4,000万円超の区分が設けられて以降、最高税率は45.945％（所得税45％および復興特別所得税0.945％）にもなる。更に10％が住民税としてこれに加算。納税のための金額を確保していないと、そのためにビットコインとかを売却することが必要になるし、価格が下がっている場合には必要な額の確保もできない。1月1日以後に納税額の確保のために仮想通貨を売却した結果、利益が生じた場合はさらにその額に基づく納税を翌年に行う。ひどい悪循環だよね、これ。

トシ　うん。だから、仮想通貨取引を行うために、税務についての正しい理解と知識が必要だって、セミナーでも講師が言っていた。税務について正しく理解することは、ディフェンス（資産を守る）のみならず、正しいオフェンス（資産を形成する）でもあるんだってね。

1.2 国税庁の仮想通貨の見解（解説）

2017年8月28日、国税庁は、タックスアンサー（以降、“8月タックスアンサー [3] ”とします）の中で、ビットコインを使用することにより利益が生じた場合、現行税制に従い課税されることを次の内容で明確に示しました。

ビットコインを使用することにより利益が生じた場合の課税関係 　ビットコインは、物品の購入等に使用できるものですが、このビットコインを使用することで生じた利益は、所得税の課税対象となります。（所得税法36条）  このビットコインを使用することにより生じる損益（邦貨又は外貨との相対的な関係により認識される損益）は、事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として、雑所得に区分されます。（所得税法35条）

更に2017年12月には、「平成29年12月１日 個人課税課情報第４号」 [4] （以降、“情報4号”とします）の中で、仮想通貨を売却、または使用することにより生じる損益やその具体的な計算方法等について、以下の9項目を中心に取りまとめたものを例示しています。

1. 仮想通貨の売却
2. 仮想通貨での商品の購入
3. 仮想通貨と仮想通貨の交換
4. 仮想通貨の取得価額
5. 仮想通貨の分裂（分岐）
6. 仮想通貨に関する所得の所得区分
7. 損失の取扱い
8. 仮想通貨の証拠金取引
9. 仮想通貨のマイニング等

仮想通貨に対する立法的な手当て [5] がなされていない現在、“8月タックスアンサー”と“情報4号”が仮想通貨に関する税務の拠り所となります。平成30年度税制改正の大綱（平成29年12月22日閣議決定）にも仮想通貨の税制に関する記述はないため、しばらくの間、現在のままの取り扱いになる可能性が高いと言えるでしょう。

1.3 仮想通貨による所得について（所得の分類－サト、トシ、アタルの会話より）

アタル　8月タックスアンサーで、「ビットコインをはじめとする仮想通貨を売却し、または使用することにより生じる利益については、事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として雑所得に区分され、所得税の確定申告が必要となる」とされたけど、確定申告なんてやったことない。どうしよう？

トシ　個人所得税の確定申告は、毎年1月1日から12月31日までの1年間の期間内の収入・支出、医療費や寄付、扶養家族状況などから所得を計算する。そしてね、申告書を税務署へ提出し、納付すべき所得税額を確定し、翌年の2月16日から3月15日までの間に税務署に納税すべき額を報告・納付する、こういうことなんだ。

サト　所得税の確定申告をすると、住民税の確定申告もしたことになるんだよ。あ、でもサラリーマンなどの給与所得者については、給与所得以外の所得が20万円以下であれば、所得税の確定申告をしなくてもいいんだよね（厳密には、所得が生じていれば住民税の確定申告は必要なのですが、住民税だけを申告されている人は、ごくわずかであると思います）。

1.3.1 所得の区分と課税（解説）

所得区分

所得については、給与所得や事業所得、譲渡所得、雑所得など、その収入の種類と性格により10種類に区分されています [6] 。
　 8月タックスアンサーにより、先ずは、ビットコインに関して生じた利益は、原則として、「雑所得」に区分されることが明確にされました。

国税庁　「所得の種類と課税方法」より

E-ゴールド

課税 雑所得は、他の所得（給与所得など）などと合算して所得税を計算する総合課税制度（累進課税5％から45％、復興特別所得税＝源泉徴収すべき所得税の額の2.1％相当額、住民税10％）が適用されます。

課税方式

分離課税制度
【申告分離課税制度】
他の所得金額と合計せず、分離して税額を計算し、確定申告により納税
【源泉分離課税制度】
他の所得と全く分離して、所得を支払う者が一定の税率で所得税を源泉徴収し、納税

総合課税制度 各種の所得金額を合計して所得税額を計算。合計所得に応じて、税率が変わる

課税方式

課税される所得金額 税率 控除額
195万以下 5% 0円
195万円を超え 330万円以下 10% 97,500円
330万円を超え 695万円以下 20% 427,500円
695万円を超え 900万円以下 23% 636,000円
900万円を超え 1,800万円以下 33 1,536,000円
1,800万円を超え 4,000万円以下 40% 2,796,000円
4,000万円超 45% 4,796,000円
※納税額は、上記に復興特別所得税(源泉徴収すべき所得税の額の2.1％相当額)および住民税10％が加算され多額となる。

譲渡所得のうち、申告分離課税制度が適用される株式（税率一律20.315％）などと比べ、税額負担が著しく大きなものとなっています。 　また、雑所得に関しては損益通算制度が適用されません。従って、
１．雑所得の計算により損失が生じた場合も、他の所得（給与所得など）から控除（利益と損失の相殺）をすることはできない、
２． 損失を翌年以後に繰り越すこともできない ということになります。
　なお、雑所得内で利益と損失が生じている場合は、雑所得内での利益と損失は相殺することができます（但し、申告分離課税の雑所得とは相殺できません）。

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